アフリカにおける社会的保護政策と農村生計
”五野 日路子 先生
国際食料情報学部 国際農業開発学科
五野 日路子 先生
国際食料情報学部 国際農業開発学科
”アフリカにおける社会的保護政策と農村生計
”アフリカにおける社会的保護政策と農村生計
”国際食料情報学部 国際農業開発学科
国際食料情報学部 国際農業開発学科
”アフリカにおける社会的保護政策と農村生計
”大学卒業後、青年海外協力隊員としてアフリカの東南部に位置するマラウイ共和国で活動していました。社会的保護政策の1つに、化学肥料やハイブリッド種子を貧しい世帯に割引価格で配布するものがあります。その政策は、農業省が管轄しており、地方事務所に勤める私にとっても年に1度の大きな仕事でもありました。ある時、農村の方が私の家に来て、「その政策の対象にしてほしい」とお願いされたことがありました。もちろん私にはそんな権限はありませんから、何もしてあげることはできません。しかし、日々活動する中で、恩恵が政策対象者へ届いているのか? また、国が目標とする貧困削減とフードセキュリティーの達成に役に立っているのか? という疑問を感じるようになりました。どうすれば政策がもっとうまく機能するのだろうかという思いから、今も「アフリカにおける社会的保護政策と農村生計」というテーマで研究を続けています。
環境問題が取り沙汰された1970年頃から50年あまり、国連などの国際社会では「サステナブル」というキーワードをもとに取り組んできた経緯があります。その1つにミレニアム開発目標(MDGs)があり、世の中の不平等をなくすために、途上国の支援が必要というアプローチが多く取られてきました。結果、MDGsにより改善された部分もありますが、達成からほど遠いものもありました。
私は「平等」の先に「公平」があり、「平等」や「公平」が実現されることが「公正」であると考えています。立場や条件の異なる人、集団が、生活や生きていくために重要なことを決定する上では、「平等」に話し合いに参加する機会が与えられなければいけませんし、話し合いの上で「公平」な判断、評価をする、される必要があります。「平等」や「公平」が実現されることで「公正」な社会が実現されると思っていますし、これらは途上国とか先進国とか関係なく考えなくてはいけない問題です。だからこそSDGsではたくさんのゴールとターゲット目標が掲げられているのです。
私の研究テーマ「社会的保護政策」は、所得や食料の不足を支援によって埋め合わせるだけではなく、貧困世帯がそれらの支援を受けることで、繰り返し貧困や食料不足に陥る心配のない状態まで生計を向上させること目指しています。ですから関わる目標は「国や人の不平等をなくそう」だけでなく、貧困に関わる目標1や飢餓に関わる目標2にも貢献するものであると思います。
新型コロナウイルスの感染拡大、その後の経済活動の回復の影響を受けて、現在世界的に原油の価格が高騰しています。この影響を受けて、化学肥料の市場価格が2倍くらいになってしまって、とても買うことできないと現地の方からつい先日、連絡を受けたところです。金銭的な支援をすることは手段として最も容易なことですが、それは抜本的な解決にはなりません。化学肥料に取って代わるものを見つけるとか、土壌改良の方法を考えるとか、今あるもので代用しようと試みています。今は現地で調査を行うのは難しいですが、遠隔でのコミュニケーションが後押しされたことにより、やり取りがスムーズになったのはコロナ禍での恩恵かもしれません。
私の研究では、これまで国のトップや、外部の国際協力機関などが行う傾向にあった政策策定や評価を、政策の対象者である農村住民の視点で行い、提言を示していくことを目指しています。SDGsに限定した話ではなく、常日頃から学生たちにも「世の中のことに意識を傾けてみて」と話しています。意識を改革することはとても難しいけれど、自分本位ではなく、周りにも目を向ければ小さな気づきが得られると思います。そしてそれを行動に繋げることができれば、世の中は良い方向に変化していくでしょうし、その積み重ねでSDGsの目標も達成に近づくのではないかと考えています。
青年海外協力隊時代から活動しているマラウイ共和国。農村の人々は自分たちの主食でもあるトウモロコシを育てています。
学生たちに日々伝えているのは意識を傾けること。SDGsに限らず、周りに目を向けることで気づきを得られるはず。