先生のSTORY

国際食料情報学部
アグリビジネス学科

山田 崇裕 先生

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Tokyo Nodai Story
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東京農業大学には「学びのチャンス」がたくさん転がっている 興味のあるものに飛び込む若い力と冷静さが自分の未来を切り拓く

農業経営学の視点から都市農業経営の成長要因と農地保全の方策を探る

私はアグリビジネス学科の経営組織研究室に所属しており、「農業経営学」を専門としています。農業経営の多様性や環境変化を踏まえつつ、農業経営の成長や地域農業の振興のためには、農業経営者や農業組織の従業員、かかわりある組織(JA、行政など)がどのように対応していく必要があるのか、課題発見や解決にむけてどのような相互関係を築いていけばよいのか等を、経営学の見地に基づいて解明を試みています。

 

私の研究対象は「都市農業」です。都市農業は、一般的に市街化区域の農業を指します。その範囲は大都市から各地の中核都市まで幅広く、耕地面積や農業産出額の面でも相当の規模となります。また、都市農業は食料生産だけでなく、環境保全や防災の機能などを有し、在宅勤務や移動制限が顕著となっているコロナ禍では都市住民の憩いの場やコミュニティ形成の場としての機能も果たしています。一方、1990年代から都市農地の保全に貢献してきた「生産緑地制度」が2022年に大きく変わり、急速な農地減少が懸念されています。こうした課題に対して、他大学の研究者や実務者と共同で都市農業経営の事例分析や統計データの分析に取り組み、研究成果のフィードバックと政策提言を行っています。

 

経営組織研究室には私を含め3人の教員がいて、それぞれ違った研究をしていますが、「研究室に所属する学生にはできるだけ農業と食品企業の現地実習や調査へ行かせたい」という共通の思いを持っています。農業経営や企業の成功要因や問題点には、地域や経営体の違いなどによる固有性が存在します。その固有性を理解するためには、学内学習に限らず実際に現場へ行き学ぶことが不可欠です。

 

都市農業を研究フィールドとする私のゼミで主催しているのが、世田谷区内のリンゴや梨の農家での実習です。毎年5月頃行われるリンゴ栽培の摘果作業は、1本の木に小さな実が数百個もなり、それを人の手で一つひとつもいでいく、とても人手が必要となる作業。ゼミ生とともにほ場を訪れ、農業生産の苦労を体で感じながら作業を行い、経営についても受入農家から本音ベースの話を聞くことができます。

 

新型コロナウィルスのまん延により、東京農業大学でも地域間の移動や宿泊を伴う農業実習が制限されましたが、世田谷区内の農業実習は大学から徒歩圏内のため、感染防止に注意を払いながら継続することができ、我慢を強いられていた学生たちからは喜びの声があがりました。

 

また、2021年からはJA東京中央会と当ゼミの共同プロジェクトとして、「江戸東京野菜の生産・流通・消費拡大と普及方策の検討」に関する研究を行っています。江戸東京野菜は江戸時代から続く東京都の伝統野菜で、地域資源や伝統文化の継承として価値が高い一方、耐病性が低く、規格が不揃いになる理由から市場から淘汰されました。その後、江戸東京野菜は様々な支援や取組により復活を遂げて保存がなされてきましたが、事業化、収益化をキーワードにビジネスの視点から持続的可能な拡大・普及方策を検討するのが重要となっています。この活動には学生も意欲的に参加し、コロナ禍でも生産者、流通業者、飲食店などの実務者にも果敢に調査を行っています。

 

 

学びのきっかけづくりが私たちの役目。先生や学生同士のコミュニケーションを大切に

私は生物企業情報学科(現・アグリビジネス学科)の出身です。当時から変わらない東京農業大学の魅力の一つに、整った研究環境が挙げられると思っています。

 

研究室には学生の演習室があり、研究をしたいとき、卒業論文を書きたいときなどに、ゼミ生は自由に使うことができます。演習室のすぐ隣には私たちがいる教員室があり、学生は相談をしたいことがあれば、すぐに先生と話ができるようになっています。

 

物理的な距離だけでなく、心の距離も近いのは、農大の伝統といえます。
私は東京農業大学に入学したとき、父の仕事がきっかけで国際協力や食料貿易などに興味を持っていて、卒業後は海外で活躍をしたいと思っていました。

 

しかし、在学中にブラジルの大規模コーヒー農場での海外実習やアジア諸国でのバックパッカーを経験し、語学力や技術の面でも、就業先を探すという面でも、海外で活躍するということはとても難しいものだという現実を突きつけられ、大きな挫折を味わいました。思っていた将来像を描くことができず、「この先、自分はどうしたらいいのだろう」と悩んだ時期もあります。

 

その時に足繫く通っていた研究室で恩師の先生に悩みを打ち明けたところ、「都市農業の調査依頼が来ているから挑戦してみないか」ときっかけを与えていただきました。研究の奥深さや難しさに四苦八苦の日々を過ごしながらも、現場と研究室に幾度も足を運んではひたすら研究に打ち込み、やがて研究成果が学会論文に掲載されたり、ビジネス雑誌に取り上げられたりしたことで研究職を目指すに至りました。

 

東京農業大学を目指す高校生や農大生の皆さんは、目標・夢に対して挫折や失敗をしたとしてもあきらめることなく、興味のあることが一つでもあれば、若い力と冷静な考察力をもって新しい世界に飛び込んでみてほしいと思います。

 

もちろん最初から主体性や明確なビジョンがなくても大丈夫。学生の皆さんが興味のありそうなこと、関心を持ってもらえそうなことを見つけて、一人ひとりが持つ良さや個性を引き出せるような提案をしたり、ヒントを与えたりすることは、私たちの役目でもあります。アグリビジネス学科では国内外の農林水産業、農村、食品関連ビジネスを対象に経営学の基礎から応用まで専門的に学ぶことができます。そこには「学びのチャンス」がたくさん転がっていますので、先生や他の学生とコミュニケーションを大切にしながらそのチャンスを掴み、時間をかけてビジョンを達成していきましょう。

 

・毎年5月頃行われている世田谷区内での農業実習。リンゴの摘果作業をお手伝い。

・京都府宇治地域におけるゼミ視察研修の様子。地域資源の生産や管理に取り組む事例を訪問し、経営の成功要因などを詳しく学びます。

・山田先生の専門は都市(近郊)農業。農業と人的資源を軸とする経営組織や社会ネットワークなどを研究しています

Profile

山田 崇裕 准教授

国際食料情報学部 アグリビジネス学科 経営組織研究室

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