先生のSTORY

国際食料情報学部
国際農業開発学科

入江 憲治 先生

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国際食料情報学部
国際農業開発学科

入江 憲治 先生

Tokyo Nodai Story
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アジア、アフリカ、南米を中心に、世界の農業・農村開発で起きている問題に取り組む

植物遺伝資源の保全・利用の活動を通して、世界の食料・栄養問題に貢献したい

私の研究は、食料安全保障の解決策として農業生物多様性を守ることを主な目的とし、「海外アブラナ属野菜遺伝資源の探索収集と特性解明」や「アフリカ地域の生活習慣や食文化に適応した新たな栄養評価法の開発」、また「環境リスクに対するレジリエントな稲作の構築」といった課題に取り組んでいます。

 

私は東京農業大学の教員として、自分自身の研究とともに、JICA(国際協力機構)や農研機構(国立研究法人農業・食品産業技術総合研究機構)と協働し、国際支援を担っていく人材の育成に力を入れています。

 

「海外アブラナ属野菜遺伝資源の探索収集と特性解明」という課題では、遺伝資源の保全と利用に取り組んでいますが、SDGsゴール2のターゲットの中でも明記されている大切な取り組みであります。人類の歴史の中でも植物遺伝資源の収集は古くから行われており、大航海時代にコロンブスが植物資源の収集を目的に海外に乗り出していったこともよく知られています。

 

近代農業の発達とともに、作物の生産効率や、効率的な食物のエネルギー源としての役割を求めるあまり、作物の種類が画一化されてきています。現在では、小麦、米、トウモロコシだけで、全世界のエネルギー摂取量の約半分を占めている状況です。つまり、市場価値のある作物の種類や品種に画一化した栽培を行うようになり、これまで栽培されてきた多様な作物種や品種が消失してしまうという問題が起きているのです。1万年という農耕の歴史の中で守られてきた遺伝資源が消失することは、人類にとって大きな損失です。

 

わが国でも遺伝資源の探索収集・保全活動は1960年くらいから行われるようになり、1992年には生物多様性条約がブラジルのリオで結ばれ、それ以降、各国が連携してこの問題に取り組んでいます。世界各国には遺伝資源を保存する施設「ジーンバンク」が設置されています。たとえばノルウェーの「ジーンバンク」では、もし核戦争などが起きて人類が消滅しても種が残るようにと、永久凍土の地下奥深くにある天然の冷蔵庫の中で種を保存しています。

 

2014年より農林水産省が音頭をとって行っている国際共同研究プロジェクト「PGRAsia」では、海外遺伝資源の探索収集・保全活動に、全国の様々な大学や試験場と共同で、国を分担して取り組んでいます。その中で私はミャンマーを担当しています。

 

現地では農家を訪ね、昔ながらの品種を、新しい品種に切り替えられてしまう前に集め、保存します。たとえばミャンマーの農産物ではカラシナが日常的な野菜の一つですが、一言でカラシナといっても、葉の縁がギザギザしたものや丸いものなど、様々な種類があります。そうした多様な品種を集め、形状を観察し、どんな病気に強いのかを調べたりして特性評価を行い、さらに多様性についてのメカニズムをゲノムレベルで解析していきます。そのような研究活動を行っていますが、ミャンマーでは、これまでに400点の遺伝資源を探索収集しました。

 

農作物の多様性は、人間が健康に生きるための栄養供給源として、非常に重要です。途上国では、これまで多様だった農作物の種類が単一化することによって、ビタミンやミネラルなどの栄養不足による健康障害も起きています。

 

私は、アフリカで起きている同様の問題にも取り組んでいますが、それが冒頭で申し上げた、「アフリカ地域の生活習慣や食文化に適応した新たな栄養評価法の開発」という課題です。そこでは、健康を維持するためにはどういった食事を取る必要があるのかなどを示したアプリケーションを開発し、栄養意識の普及活動も行っています。

 

 

 

実習や研究室での活動や様々な人との交流によって「学び」を深めていく

私が行っているこうした海外でのプロジェクトには、学部生や大学院生も参加しています。たとえばアフリカのケニアでは、1週間現地の家庭に入って生活をともにし、その家庭の食生活を記録するという活動も行っています。東京農大では、大学院に在籍しながらJICAの海外協力隊で活動できる協定を結んでいます。JICAの一員として2年間現地に赴いて研究テーマ決め、その後大学院に戻って2年間、研究室で学びを深めることができます。この制度を利用して、ケニアで協力隊活動と研究活動を行っている大学院生もいます。

 

本物の知恵とは、現場での経験がないと培うことができません。大学での「学び」とは、教室での講義とともに、実習や研究室などでの現場活動や、教員による直接の指導や学生間の交流によっても深められていくものです。こうした総合的な「学び」は、人間形成をしていくうえでも大いに役立ちます。

 

東京農業大学の魅力は、食料・農業分野における自己完結型の教育・研究が可能なところにあります。私の研究室には海外で活躍したいという人が集まっていて、学生同士、また卒業した先輩などとも、いろいろと情報交換をして学び合うことが継承されています。

 

研究のために学生を海外に送り出すことは多くありますが、それ以外の実習でも、積極的に学生を海外へ送り出しています。グローバルな社会に対応するためには、柔軟な思考や異文化理解が必要とされます。学生の皆さんには、多様な人々と協働するためのコミュニケーション力を養っていってほしいですね。

 

世界の農業・農村開発に関心を持ち、国際協力のために積極的に活動する意欲や国際社会に貢献する希望を持っている高校生の方々には、ぜひ本学科に入学していただき、ともに学びを深めていくことができれば、と思っています。

 

・稲の遺伝資源サンプル(教材)。稲だけでも、いかに多くの品種があるかがわかります。

・ミャンマーの農家にて収集した遺伝資源(種子)と情報の整理(写真右奥)の様子。

・JICAプログラムにて来日しているカメルーンからの留学生(大学院修士課程2年生)。研究室には留学生も多く、留学生との交流によっても国際感覚は磨かれます。

Profile

入江 憲治 教授

国際食料情報学部 国際農業開発学科 熱帯作物学研究室

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