先生のSTORY

地域環境科学部
地域創成科学科

下嶋 聖 先生

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地域環境科学部
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下嶋 聖 先生

Tokyo Nodai Story
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Tokyo Nodai Story

離島やヒマラヤなどフィールドを選ばずドローンを飛ばし最新技術で 環境解析を行い、
自然環境問題の解決策を提案するのが仕事です

20年前は2カ月かかっていた調査が技術革新により1日で完了!

国内外の山岳地で、ドローンや衛星画像に代表されるリモートセンシング技術やGIS(地理情報システム)を使用した環境解析を行い、それに基づいて環境保全の計画や自然再生に関する研究を行っています。

 

たとえば日本では全国各地でシカが増えて問題になっていますが、沖縄本島から西に20~25km、ダイビングのメッカとして有名な慶良間諸島にも「ケラマジカ」がというシカが生息しています。北海道や本州などでは、増え続けるシカが毎年70万頭近く捕獲されている一方で、ケラマジカは狭い島の中に、400年以上も絶えることなく、絶妙な生態系バランスを保ちながら住み続けているのです。

 

なぜケラマジカが絶滅することも増えすぎることもなく、このような形で島の中で暮らし続けていられるのかを調べるためには、シカの分布の把握などが必要です。その際に使われているのが、リモートセンシング技術やGIS。この研究で解明したことが将来、増え続けるニホンジカの問題解決に役立つのではないかと期待しています。

 

コロナ禍前は海外も研究フィールドにしており、ヒマラヤの環境調査を大学院生の頃から続けています。初めてヒマラヤを訪れたのは2003年。東京農大の山岳部が実施したエベレストと世界第4位峰のローツェの遠征にベースキャンプマネージャーとして参加しました。私は山頂までは登らなかったのですが、憧れだったヒマラヤを目の前に、エベレスト・ベースキャンプに2カ月滞在し、様々な環境調査を行いました。

 

ネパール政府にとっては、ヒマラヤの登山客は大きな収入源。しかし環境を守るための適切なルールがなければ、人が集まってくることで出るゴミにより氷河が汚染され、氷河が溶けて下流地域が洪水被害に遭う可能性があることがその時の調査でわかりました。

 

当時に比べると、今はドローンなどの性能がグンと上がり、リモートセンシング技術やGISの精度は格段にアップしています。2003年は地べたを這いつくばるようにして古典的な測量機械を使ってベースキャンプの地図を作るなど、約2カ月近くをかけて調査を行いました。それが2016年にマナスルで調査をした時は、ドローンをピュッと飛ばすだけ。2カ月かかっていた調査取得を1日で終えることができました。技術革新と共に取得データが広域的で網羅的になったことは、研究を進めるうえで大きなメリットになっています。

 

このように国内海外問わず、ある地域の環境がどのような状態にあるのかを把握してメカニズムを解明したあと、問題点をどのように改善するかを考えて、提案するのが私の仕事です。

 

 

 

現場に足を運ぶことに勝るものなし!若い感覚で五感を研ぎ澄まして

今の時代、発達したリモートセンシング技術やGISを使えば、極端なことを言うとフィールドに行かなくても学生たちは研究を進めることが可能です。でもその場所に行ったことがないと、いくらデータがあっても解釈するのはとても難しいもの。やはりどんなに技術が進化しても、現場に足を運ぶことに勝るものはありません。本を読み頭で考え、どんなに優れた技術を使ってもパソコンに浮かび上がる結果だけでは、リアルな自然の姿は浮かびあがってこないのです。その場所に行き、若い感覚を研ぎ澄まし五感で読み取ったことを、学生たちには大切にしてほしいと思っています。

 

自分に嘘をつくことは、苦しいことです。研究も同じ。理想と現実は違いますから、「このデータのここが少し変わってくれたら都合がいいのにな」と思うことばかりです。自然相手のフィールド調査では、思うような調査結果を得られないことも珍しくありません。でもどんなときでも真実から目を背けないこと。自然の摂理は絶対で、人間の思うとおりには決してならないのです。

 

多くの人は卒業後、研究職に就くわけではありませんから、苦労しながら大学で研究をする意味がどこにあるのか、と思う人もいるでしょう。でも卒業論文で培った交渉力やプレゼンテーション力、データをわかりやすく加工し皆に発表する技術などは、社会に出てから必ず生きるはず。無駄だと思うことでも、将来何が役に立つかなんてわからないものです。

 

研究テーマに悩む学生もたくさん見てきましたが、私は難しく考える必要はないと思っています。小学生の自由研究と同じく、大学での研究もスタートは「なんでだろう?」という小さな疑問から生まれます。小学生の時の身近な、ささいなテーマに関心を持つ、その気持ちを忘れないでほしいですね。

 

これから東京農業大学への入学を希望する高校生の皆さんに伝えたいのは、今の時点で明確な目標を持ち、将来自分が何者になりたいのかがわかっている必要はないということです。まずは自身が持つインスピレーションを高めて、がむしゃらに突き進んでほしい。本気で取り組みたいことを見つけるのは大学に入ってからでも間に合います。若い時の失敗や苦い思い出は必ず糧となり、未来の自分を助けてくれるでしょう。

 

今はすぐにネット検索ができる便利な時代ですが、そこで出てくる答えはキーワードを入力したことで導き出された結果だけ。インスピレーションで感じた言語化できない空気感や人の気持ちは調べることはできません。

 

たまにはスマートフォンを置いて、自分の五感を信じて外へ出てみませんか。いつもは気づかなかった身近な小さな変化や、新しい興味のタネを発見できるかもしません。自然があなたに教えてくれるものが、きっとあるはずです。

 

・下嶋先生が実習や研究で実際に使用しているドローンなどの機材

・多摩丘陵での1年生対象に実施された実習の様子。皆、熱心に話に聞き入っていました。

・名前の由来は南アルプスの「聖岳」から。山好きの両親の影響もあり、山の環境を守る今の仕事に。

Profile

下嶋 聖 准教授

地域環境科学部 地域創成科学科 地域環境保全学研究室

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