先生のSTORY

地域環境科学部
森林総合科学科

橘 隆一 先生

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地域環境科学部
森林総合科学科

橘 隆一 先生

Tokyo Nodai Story
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ひと粒の種から世界の課題解決を目指す! 最先端の緑化工技術がその可能性を導く

挑戦のフィールドは東アフリカのジブチ共和国

植物や森林自体の回復力を促しつつ手を加え、できるだけ自然な形で荒廃地や崩壊地、人為的な裸地などに森林生態系を回復させること。森林総合科学科の「治山緑化工学研究室」では創設以来60余年、この目標を掲げています。その目標達成の手法のひとつに「緑化工技術」があり、これはその土地自体を安定化させ、植物が根付くよう処置をする取り組みです。研究室ではほかにも様々な緑化技術を用いて、国内外のフィールドで実践的な研究に臨んでいます。テーマが多岐にわたるなか、今回は東アフリカのジブチ共和国(以下、ジブチ)で展開しているプロジェクトを紹介します。

 

ジブチはアフリカ大陸東部の「アフリカの角」と呼ばれる地域に位置する、四国の1.2倍ほどの面積を有する小国です。熱帯乾燥気候帯のジブチは世界で最も暑い国ともいわれ、平野部ではサバンナや砂漠が広がる一方、沿岸部や沖合の小島にはマングローブ林が散在し、標高1000m以上の山岳地帯の一部には常緑針葉樹林帯も存在するなど、多様性な植生が広がっています。そして、地政学的には安定した国ではあるものの、周辺諸国には情勢不安があり、ソマリア沖の海賊対策をきっかけに日本の自衛隊が駐留し、諸外国の軍隊も要衝地として駐留していることも重要なポイントです。

 

厳しい自然環境のなか、私たちはジブチで建材、薪炭材、飼料、食用、薬用、染料などに利用できる植物を中心に、20種以上の植物種子を採取し、それらの発芽特性や生育特性について研究を進めています。併せて、高い発芽率を保ったまま種子を保存する方法や、遅い発芽時期を促進させる方法なども検討しています。また、未だ利用されていない有機性資源(バイオマス)を積極的に活用した有用植物の生育方法も模索しており、現地で入手しやすい堆肥を想定し、有用植物に対する家畜糞堆肥の施用効果も確認してきました。

 

こうした多面的なアプローチによって、熱帯乾燥気候帯のジブチに有用植物を栽培・繁殖させるモデルケースが確立できれば、将来的にはこの国に新たな雇用が創出でき、ひいては東アフリカ全域に共通する貧困問題や、それにまつわる海賊出現の問題を、解決へと導くことも夢ではないと思っています。ひと粒の種から植生を育み、その力で世界を動かせるのが、治山緑化工学研究室なのです。

 

 

 

自分の価値観を大切にしている学生の姿が頼もしい!

新研究棟も立ち上がり、東京農大の研究環境については、今とっても充実していると思います。でも、実際に研究を行うのは人間ですから、その人間性がいちばん大切ですね。その点農大には、芯をもった真面目な学生がたくさんいて、他大学の先生からも「農大生はフィールドでの動きが実に良いですね!」とお褒めの言葉をよくいただきます。学生たちからそうしたポテンシャルを引き出すことは、本来我々教員の役目でもありますが、有り難いことにこの点については出番があまりありません!真っ直ぐな学生とともに研究に打ち込めることこそが、研究環境の最大の魅力であると私は思っています。

 

森林を舞台に展開される林業は、短くても50年、100年単位で物事を考えていかなければなりません。そして農大のなかで、時間スケールが最も長い分野が森林総合科学科でしょう。学生たちはゆっくり長い時間をかけて生長する植物が相手ですから、一見すると性格も少しのんびりしているようにも感じます。でもその核心は、中・長期的な視点や考え方を持って、どっしりと構えている姿勢にあります。多勢に流されず、自分の価値観を大切にしている学生たちの姿を日々見るにつけ、とても頼もしく、誇らしく感じています。

 

講義では、学生たちから毎回コメントをもらい、その内容を学生たちに還元する、双方向のやり取りを継続しています。その際、他者の意見を読んだ学生からは、「同じ学年の仲間がこんなに深く考察しているのか!」という声が上がり、刺激を受けた学生同士が化学反応を起こし、自立的に成長していくのです。他者から謙虚に学ぶ姿勢も素晴らしいと思っていますが、講義をきっかけに、こうしたコミュニケーションが生まれるのはうれしい限りです。大学の4年間は人生の黄金期ですから、あらゆる経験を通じて、様々な出会いを楽しんでほしいですね。たった一瞬の出来事が自分の人生を変える! そんな素晴らしい出会いが、あちらこちらに転がっているのが学生時代です。ぜひ存分にそして真剣に、楽しんでほしいです。

 

これから大学受験に臨む高校生の皆さんには、可能な限り自ら足を運び、自分自身の眼で大学の魅力を確かめてから、志望校を選んでほしいと思います。情報過多の今の時代、多勢の意見や大学を順位付けする情報に惑わされることなく、皆さんそれぞれにぴったりな進学先が見つかることを願っています。さらに願わくは、東京農大のキャンパスでお目にかかれる日を楽しみにしています!

 

・胞子からの繁殖技術を目指した日本産シダ類の生育実験。

・ジブチにて採種した多様な植物種子のサンプル。

・ジブチ北部山岳地帯にて、大木からの種子採取風景。

・自然は最大の学び舎。自然に学び,その自らの回復力をいかんなく発揮させることで、森林の再生を目指す。植物の発芽はその第一歩。

Profile

橘 隆一 教授

地域環境科学部 森林総合科学科 治山緑化工学研究室

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