先生のSTORY
応用生物科学部
食品安全健康学科
煙山 紀子 先生
先生のSTORIES
応用生物科学部
食品安全健康学科
食品安全健康学は、私たちが摂取している身近な食品の安全性について科学的に検証するほか、食品(成分)が持つ機能がヒトの体にどのような影響を与えるのかを解析することによって、食品を安全に利用して、健康増進に貢献することを目指す学問領域です。たとえば、食品の衛生や化学物質汚染、食品添加物などの安全性、あるいは特定の食品を過剰に摂取した場合の健康への影響などを考えるとイメージしやすいでしょうか。
食品安全評価学研究室では、食品に含まれる健康への悪影響が懸念される物質だけでなく、肥満・脂肪肝・がんなどの生活習慣病に対する制御効果が見込まれる物質の影響など、食品の健康増進機能性や安全性、つまりその良い面・悪い面の両方を研究しています。私自身は、脂肪肝から肝硬変・肝がんに進行するおそれのある病気の動物(マウス)モデルを作製して、その病気の背景メカニズムがどんなものかを研究したり、摂取する脂質の組成を一部変えたり、なんらかの食品(成分)を同時に摂取させたりすると病変がどのように変化するかを、健康増進機能・安全性の両面から解析しています。
私達の研究分野は医学とも関連の深い分野ですが、特定の因子が病気のメカニズムや創薬に結びつく医学と異なり、身近な食品についての研究は食事の組成や環境そのものなど幅広く多様なファクターが絡むのが特徴的です。医学や栄養学の領域も加味して、ベースとなる栄養状態に何かを加えたり減らしたりするときに健康によい影響があるのか、または悪い影響があるのか、どのようなメカニズムで病気が抑制されたり増悪したりするのか、などを探っています。また、健康になろうとして思わぬところで健康を害さないようにする、あるいは過度に恐れないようにするためには、安全面の検証とその情報を正確に把握することが必要であり、多面的に物事を見ていくことが大切と感じています。私達の身近な食生活に直結する重要な研究でもあると思います。
農生命科学系の学部・学科が多く存在している東京農業大学には、関連する設備が充実しており、様々な分野の専門的知見を有する教員が多数いることから、研究方針等について気軽に相談できる受け皿がたくさんあるように感じています。
私自身、身近に糖尿病を患った人がいたのをきっかけにこの道を志したのですが、食品安全評価学研究室を志望する学生には、食品(成分)の、体への作用や健康について深めたいという思いがある学生が多いようです。3年次から研究室に所属して指導を受けつつ、解剖やマウスの飼育などはチームを組んで協力しながら、未知の分野を解明する研究に参加できる点も魅力の一つではないかと思います。
学生を見ていると、東京農業大学は勉強・研究・学生生活を存分に楽しめる場所だと感じます。特に「収穫祭」(学園祭)を中心として1年のサイクルを考えている学生もいるほど、学園祭に注がれるエネルギーは大きく、そのパワーにこちらも刺激を受けます。模擬店で食品を提供する際には、「この食品には〇〇が入っている」「この加熱処理が重要管理点だ」など学びで得た専門的な知識を活かした会話がなされているのも印象的です。
大学の研究室は社会に出る一歩手前の学びの場です。民間企業や公務員、大学院等、進路は多岐にわたりますが、どのような進路を選択するとしても、授業や研究室で学んだことを活かして欲しいと思っています。そのために、まずは論理的な思考力や情報を読み解く力、そして粘り強さなど、基礎的な事項をしっかりと身につけることが必要不可欠です。それを土台にして自ら考え、問題解決ができるようになってほしいと考えています。私達教員は、学生の自主性を重んじながら、自立へ向けて親身になって相談に乗れる身近な存在でありたいと思っています。
・食品(成分)が病気の進行に与える影響の分子メカニズム解明や、安全性検証のための動物実験代替法に取り組む。
・コロナ禍を経て、対面とオンライン、双方のメリットを活かしながら授業が展開されている。