先生のSTORY

応用生物科学部
農芸化学科

梶川 揚申 先生

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Tokyo Nodai Story
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微生物の有用な機能に着目。 乳酸菌を運び屋にした経口ワクチンの開発を目指す

経口ワクチンの研究がきっかけで、「泳ぐ乳酸菌」の研究も

微生物は環境のいたるところに生息し、その環境に適応するために様々な機能を発達させてきました。応用微生物学研究室では、微生物が持つ有用な機能に着目し、それを利用する、あるいは新たな機能を見出す研究を行っています。

 

私自身は大学院時代から継続して、「乳酸菌を運び屋にした、飲んで効くワクチン」の開発を研究しています。乳酸菌は食品由来の微生物あるいは腸内細菌の一種として知られていますが、安全性が高く経口摂取が可能であることから、これを媒体としたワクチンの開発を目指しています。ワクチンが未開発、あるいはこれまでのワクチンでは効果が不十分な領域に対して、安全性が高く安価に生産できる経口ワクチンの新たな選択肢を提示する試みです。

 

また、経口ワクチンの研究がきっかけとなり、べん毛という繊維状のスクリューを持った「泳ぐ乳酸菌」の研究も行っています。一般的な乳酸菌は非運動性で、腸内でも粘膜層に隔てられて生体には直接接していませんが、べん毛によって運動性を獲得した乳酸菌は、粘膜層を泳ぎ回ることができます。それによって宿主の免疫細胞層に到達する頻度が上がるのではないかということと、もう一つはべん毛を構成しているタンパク質自体が免疫学的な活性を持つことから、ワクチンの運び屋として向いているのではないかと魅力を感じて使い始めました。

 

現在は走化性・べん毛特性に関する基礎的な研究が中心ですが、病原体の一部を組み込んでワクチンに応用する研究も進めています。企業と共同で動物のワクチン開発などの実用研究も行っており、今後の展開次第では人の健康や様々な生産活動に資する可能性のある、重要な研究だと思っています。

 

 

 

研究テーマの幅や課題解決の選択肢が広がりやすい

研究ツールとして、遺伝子組換えやゲノム編集技術の改良も進めているのですが、阻害剤として用いる有機化合物が入手困難なとき、お隣の生物有機化学研究室で合成していただけたことがありました。学科内だけでも幅広い分野の研究者がおり、他学科にも専門分野が近い研究者がいるので、気軽にコラボレーションすることができます。専門的な議論や相談がしやすく、研究テーマの幅や課題解決の選択肢が広がりやすいのが東京農業大学の強みだと思います。

 

学生の数も多いので、卒論研究を行う学生の研究テーマをたくさん用意する中で、既に軌道に乗っている手堅いテーマ以外に、将来的な研究シーズを探すための冒険的な研究にもチャレンジする余地が生まれます。できるだけ学生自身が興味を持っているテーマ、イメージに近づけるような選択肢を提示するように努めています。

 

本学の学生は、派手さはなくとも地道に努力を重ねていて、中には卒論研究において海外の学術雑誌に投稿できるレベルの素晴らしい成果を残した学生もいます。また、就職先から期待以上の働きぶりで同じような学生がまた欲しいといったお話をいただくこともあります。

 

我々教員にできることは、できるだけを多くのチャンスを提供することくらいで、志を持った学生は自分で育つものだろうと感じていますが、講義でも研究でも自分自身が楽しむ姿勢を大切に、それが学生に伝われば学問や研究に前向きに臨んでくれるのではないかと期待しています。

 

大学での研究というのは、それまでのインプット中心の学びとは違い、情報を調べて、実際に実験でデータを出し、それを発表する過程で個々のデータを統合したり、わかりやすく説明したりとアウトプットする機会が増えます。最初はうまくできなくても、繰り返すうちに思考が整理され、知識が体系化されて点と点がつながっていきます。そうした論理的な思考力を身につけることができた学生は社会でも活躍するのではないかと思います。

 

東京農業大学は、充実した教育・研究環境が整っていることは確かです。それを自分の糧にできるかどうかは、結局のところ自分次第ですが、志を持って入学すれば、後悔はないと思います。研究も学生生活も、自ら主体的に取り組み、成果につなげて欲しいと思います。

 

・嫌気チャンバーでの作業。乳酸菌のなかには酸素があると生育しにくい(=嫌気性)菌があります。

・留学経験もある梶川先生から、分子生物学や免疫学の知識を駆使した研究手法を学ぶ。

Profile

梶川 揚申 教授

応用生物科学部 農芸化学科 応用微生物学研究室

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