先生のSTORY

農学部
デザイン農学科

風見 真千子 先生

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デザイン農学科

風見 真千子 先生

Tokyo Nodai Story
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「食品の機能性」を向上させるメカニズムを遺伝子レベルで解明することが
世の中を変える大きな力になる

物事の真理に出会えることが研究の醍醐味

私は現在、大豆ホエーに含まれるデハイドリンという成分について研究しています。大豆ホエーとは、大豆から食品や工業用に使用する分離大豆タンパク質を抽出したあとに発生するものです。再利用する用途がまだ見つかっておらず、大量に廃棄処分されて環境に大きな負荷をかけているのが現状です。これまでにデハイドリンには、肉や魚を冷凍解凍した後や加熱調理した後の食感を向上させる機能があることを発見しました。しかしそのメカニズムは謎に包まれているため、その謎を解き明かすことは未利用資源である大豆ホエーの価値を高める意味でもニーズの高い、非常に価値のある研究だと考えています。

 

デハイドリンの解析は遺伝子レベルで行っています。デハイドリン遺伝子の塩基配列を一部書き換えることで、デハイドリン遺伝子のどの部分が食品の食感を向上させる機能に関与しているのかを詳細に調べています。この研究によってデハイドリンの食感向上メカニズムが明らかになれば、冷凍食品をはじめとする食品分野への応用はもちろんですが、高い保蔵性を維持したまま食品を輸送することが可能になるため、流通の現場にも貢献できます。さらに、応用次第では、医療分野への貢献も期待できるため全力で取り組んでいます。

 

そのほかにも、最近では「食が人の精神充足機能に与える影響」についても研究を進めています。多くの人は、食事によって幸せを感じた経験があると思いますが、その気持ちが私たちの身体にどのような影響を与えるのかを解き明かしたいと考えています。

 

こうした大学の研究のいいところは、一見何に役立つかわからないことに関しても、興味に従ってとことん掘り下げて追求できるところにあります。企業では商品化につながらない研究は中止されてしまうこともありますが、大学の研究では、純粋に物事の真理を探究できるところに面白さがあります。

 

最終的な目標は何らかの形で世の中に貢献することであり、その点は企業と同じです。しかし大学の研究は利益が絡まず、目的が限定されないため、より自由な視点で取り組むことができ、将来的に、世の中を変えていく大きな力を秘めています。

 

研究では、予想とは異なる結果が出ることもしばしばありますが、自分が立てた仮説通りの結果が出たときや苦労の末に新しい発見があったときは、いわゆる“脳内ホルモン”が分泌されたのがわかるほど、気持ちが高ぶります。ノーベル賞を受賞されるような先生方をはじめ、多くの科学者は同じだと思いますが、新たな発見や、真理を垣間見る瞬間に研究の喜びがあると思っています。

 

 

 

閃きのままに研究を展開できる環境が大きな魅力

東京農業大学の魅力は、学外の機関や企業はもちろん、他学部や他学科、他研究室の先生方と共同研究が盛んに行われている点があげられます。自分だけでは知識や技術、また手持ちの機器の観点からも展開するのが不可能な研究も、閃いた研究内容を専門分野の先生にご相談しながらより幅広い視点で展開することができます。それは大変魅力的であり、快く協力してくださる先生方や、そのような環境で研究できることに感謝しています。そうした先生同士のつながりが学生にも良い影響を及ぼしていて、学生が他の研究室に出入りする機会があることで、得られる気づきもあります。

 

学生には、研究については主体的に調査、実験し、得られた結果を考察する姿勢を身につけてほしいと願っています。失敗してもいいので、とにかく挑戦すること。失敗から学びを得て、今後に生かしていくことが重要だと考えています。

 

私はもともと、医療分野の研究が専門で、アメリカの大学では「腫瘍抑制メカニズムの解明」をテーマに研究を行っていました。今はこれまでの研究で培ってきた医学や分子生物学のスキルを生かし、母校である農大で食品の機能性に関する研究を展開しています。医療と食品という二つの分野を融合させた研究を展開しているからこそ、分野を超えて生かせる基礎的な研究技術を身につけておく大切さを痛感しています。

 

私の講義は食品関係に加え、栄養学や遺伝子操作などの高度な科学技術を用いた内容が多いため、学生にとっては少し難しい講義内容かもしれません。でも、そうした知識をきちんと身につけておけば、就職後や別の分野の研究に携わることになっても必ず役立ちます。今後ますます国際化が進み、仕事相手が諸外国の人々になる機会が増えていく中では、幅広い知識や高度なプレゼンテーション能力が求められていくでしょう。授業やゼミでは厳しく指導することもありますが、それは学生の皆さんに国際的に活躍できる人になってほしいと願っているからです。

 

なりたい自分になれるかは、自分次第です。自分を信じて努力していれば、一人では乗り越えることのできない困難に直面したときに手を差し伸べてくれる人が必ず現れます。自分の道を切り開くのは自分自身でしかありません。これから大学生になる皆さんには、なりたい自分を目指して、どんな困難にも立ち向かう力を身につけてほしいと思っています。

 

・博士号取得のお祝いに大学の恩師と研究室の仲間からいただいたピペットマンは、アメリカの大学での研究にも使っていました。今でも、研究する上での大切なパートナーです。

・学生時代の研究ノート(実験の記録帳)。恩師である当時の指導教員に“こんなにきれいなデータはみたことがない”と褒められたことが現在の私につながっており、学生たちにこうしたモチベーションを与えられる指導ができるよう心がけています。

・以前は医療分野で遺伝子操作などの技術を用いて研究していましたが、今はその技術が食の分野で役立っています。

Profile

風見 真千子 助教

農学部 デザイン農学科 食機能科学研究室

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