在学生のSTORY
農学部 デザイン農学科
食機能科学研究室
大場 安奈 さん
在学生のSTORIES
農学部 デザイン農学科
食機能科学研究室
現在は卒業研究でエディブルフラワー(食用花)の成分分析をしており、主にポリフェノールの定性や定量、活性について調べています。エディブルフラワーの機能性を発見しその知識を広めることで、消費の拡大に繋がればと考えています。
そもそもこの研究に取り組もうと思ったのは、エディブルフラワーのジャムの開発に携わったことがきっかけです。農大の卒業生である野菜の卸売業者の方が先生に、「コロナ禍で外食産業がストップした影響で、エディブルフラワーが大量廃棄され農家が困っている。どうにかならないものか」と相談され、そこで先生が「エディブルフラワーを加工して活用する方法はないものか、考えてみよう」と学生に声をかけてくださったのです。
先生の呼びかけによって研究室のメンバーが有志で集まり、まずエディブルフラワーで何をつくることができるのか考え、学内での加工実績があり長期保存が可能なジャムをつくろう、ということになりました。企画から製造、商品のネーミング、パッケージデザインまで、学生たちが協力してプロジェクトを進めていきました。そのときどき、できる人ができる範囲で参加するかたちでしたが、私は研究室の室長ということもあり、また、コロナ禍で休講期間も長かったので、研究室で行う実習にはできるだけたくさん関わりたいという気持ちから、すべての工程に参加しました。
みんなでアイデアを出し合い、エディブルフラワーは見た目が美しいのでジャムにする際は商品の付加価値として、「色の美しさ」を活かそうということになりました。製造過程では、まず花の色味を最大限美しく保ちながら長期間保存するために、花を新鮮なうちに凍結乾燥(フリーズドライ)し、褐変したりシワシワになってしまうのを防ぎました。凍結乾燥させれば、エディブルフラワーに含まれる栄養素ポリフェノールを失うこともありません。
エディブルフラワーにはほとんど味がないので、ハーブティーで味付けをしました。エディブルフラワーの発色をよくするためにジャムのベースが濁らないように工夫をし、エディブルフラワーの花びらも入れて、見た目に美しくおいしいジャムに仕上げることができました。
できあがったジャムは予想以上に好評で、売り上げも伸びています。最初にこのお話をくださった卸売業者の方や、ジャムの加工場の方ともお会いする機会があったのですが、生産農家だけではなく流通や加工の方々もコロナ禍の影響で収入が減って困っていたとのこと。「このジャム製造が食用花の売り上げに繋がって助かった。ありがとう」とおっしゃってくださいました。
食品ロスの問題については講義で学んだことはありましたが、こうして現場で学ぶことができ、とても貴重な体験となりました。廃棄される食品を商品化すれば、少しずつでも食品ロスの問題解決に繋がることを肌で感じられたこと、そして何より困っていた現場の方の役に立てたことが、とてもうれしかったです。
農大のデザイン農学科を志望した理由は、研究の対象が幅広く、在学中に自分が研究したいことを探すことができると思ったからです。また、農業実習ができることも魅力でした。そして学びを進めるうちに食品の機能性成分に興味を持つようになり、食機能科学研究室に進みました。この研究室は昨年(2020年)新設されたため、研究室の運営に関しては試行錯誤していますが、所属する学生はみんなとても協力的で、まじめな雰囲気の研究室です。エディブルフラワージャムのプロジェクト以外にも、様々な新しい試みに積極的に参加しています。
私は農大に入ってから、積極的に自分の意見を言えるようになりましたが、それは、実習などで人と意見を交換する機会が多いため、性格が少しずつ変化したのかなと思っています。
農業実習では、みんなで協力し合わなければならず、自分から進んでコミュニケーションをとっていかなければならない場面もたくさんあります。また研究室の室長として、先生と生徒の間の繋ぎ役やまとめ役を経験したことも、まわりの人とより積極的に関わっていく、よい訓練になっているのかなと感じています。
今後はジャムづくりをきっかけに出会ったエディブルフラワーについて、大学院でより研究を深め、将来的には食品の研究開発に携わりたいと考えています。
・エディブルフラワーのジャムの商品名は、「食べるお花のジャム」。黄色、赤、紫の3種類の色と味が楽しめます。
・企画段階が一番苦労しました。商品名も、プロジェクトメンバーみんなでいろいろなアイデアを出し合って決めました。