卒業生のSTORY

東京農業大学 卒業生
株式会社クラレ 鹿島事業所
エラストマー研究開発部

森川 未来さん

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東京農業大学 卒業生
株式会社クラレ 鹿島事業所
エラストマー研究開発部

森川 未来さん

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Tokyo University Of Agriculture
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「実験は、あせらず急がず」「予想外の結果も楽しむ」。この大切さを東京農大で実感

実験での失敗がきっかけとなり、実験が大好きに

私は「微生物に関する研究がしたい」という一心で分子微生物学科に入学。目に見えない微生物の世界に興味があり、入学後は実験の楽しさに引き込まれていきました。高校までは決められた実験をすることがほとんどだったため、そこまで実験は好きではなかったのですが、大学で自ら考えて工夫を凝らし、結論を導き出す経験ができたことで、実験が大好きになりました。

 

転機となったのは、学生が自宅から土や雑巾などを持参し、培地で菌の有無を確かめる実験です。きちんと手順を踏んだはずなのに菌が確認できなかったため、いくつかの論文をチェックしたところ、乾いた雑巾よりも湿った雑巾の方が菌は繁殖しやすいことを知りました。実験には失敗して予想外の結果が出たのですが、その理由を主体的に調べて考察することで、“失敗が失敗ではなくなる”ような貴重な経験になりました。もちろん予想どおり、仮説どおりの結果が出ればうれしいですし、思いがけず良い結果が得られれば、その理由を調べる楽しさもあります。一方で、実験が失敗すれば悲しさや悔しさを感じるものの、そこから前向きな気持ちに切り替えて原因を分析する時間すら楽しく感じられるようになったのです。

 

 

コツコツタイプの私にピッタリな「急いではいけない研究室」

在学中に所属した研究室は、資源生物工学研究室です。研究室選びで見学した際、先輩方がイキイキと実験をしている姿を見て、この活気あふれるチームの一員になりたいと思いました。先輩方はほぼ毎日研究室に来て、計画的に様々な実験にチャレンジしていました。多くの刺激をもらえましたし、実験の進め方などのアドバイスをいただいて実践につなげることもできました。密にコミュニケーションが取れる環境だったおかげで、年上の方との対人スキルも磨かれていき、日々の対話をとおして自分の可能性が広がっていく感覚もありました。

 

卒業研究のテーマに選んだのは「タンパク質とカロテノイド」。海には海綿動物といい、青や赤、黄色などのカラフルな生き物がいます。鮮やかな色には、カロテノイドという天然色素とタンパク質が結合した物質が関係しているのですが、タンパク質の機能が未解明だったため、先輩と一緒に研究を進めることになりました。

 

当時、指導教員や先輩方に教わったのは、じっくりと一つずつ実験を行い、失敗してもその原因を分析する大切さです。「面倒かもしれないが時間をかけなさい」「急いではいけない」と指導を受け、コツコツタイプだと自覚している私に合っていると感じました。まとめてできそうなことは、まとめてやってしまいたくもなりますが、それでは結果の考察が不十分になりかねません。例えば、原因として考えられる2つのポイントA・Bと、それらによって生じたと考えられる2つの結果C・Dが確認できたときに、AだからCなのか、BだからCなのかなど、A・BとC・Dの因果関係がわかりづらくなってしまうのです。それゆえ、一つひとつ丁寧に実験をして、原因と結果を明らかにしていくことが大事。その考え方や実験の進め方は、ダイレクトに現在の仕事に活かされています。

 

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在学中とは扱う物質や分析内容が変わりましたが、じっくりと丁寧に実験を行う意識は変わっていません。

 

「手を動かしたい」「実験したい」という思いが100%叶った職場

現在の私の役割は、ポリマーの研究開発。具体的には、自動車用タイヤの製造時に添加剤として使う液状ゴムの開発です。目的は、現行品からのコスト削減や、より良い物性の実現。走行時のグリップ性能や安定性、耐摩耗性などをバランスよく向上させることがミッションです。業務は実験の繰り返し。専用の反応装置を使用し、反応条件を変えながら、原材料であるモノマーに対して「重合」という化学反応を起こさせます。複数の原材料と、重合反応に必要な触媒の組み合わせを試しながら、最適な反応条件を導き出しています。

 

日々の業務は、数年先の新商品発売に向けて計画されたタイムラインのもとで進められます。重合が成功したら生成されたポリマーの機能を検証し、失敗してもその原因を分析。改善策を話し合って再び実験を行います。現在のラボスケールでの実験と検証を経て、より大規模な設備でタイヤの試作品づくりを行う段階や、その後の大量生産に移行させる段階では、それぞれ別の実験と検証も必要になります。

 

ただ、ポリマーに関しては、大学1年次に授業で少し触れた程度。力を注いだ卒業研究はタンパク質がテーマでしたので、業務に必要な知識や技術は、入社後に必死な思いで習得していきました。実験装置も在学中に扱ったものとは違い、ほぼ全てが初めての実験でした。それでも、「手を動かしたい」「実験したい」という思いは100%叶えられているのが現在の職場。知識不足を痛感する場面もありますが、分からないことがあれば積極的に質問し、上司が丁寧に説明してくださいます。当初は「別の仕事をしている上司の時間を奪ってしまうのではないか」「私からの質問で仕事の邪魔をしてしまうのは申し訳ない」という気持ちもあった中で、時間を割いてサポートしてくれる上司には感謝しかありません。在学中の先輩方のように、現在の上司も聞きやすい雰囲気をつくってくれており、私はとても恵まれていると思います。

 

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風通しが良く居心地の良い環境に感謝しながら、さらなる成長を目指します。

 

決めつけはNG。東京農大ならアレもコレも経験できる

街を走る車を見ていると、数年後には私が研究開発に関わったタイヤが世界中に流通し、人々の移動や物流に貢献できるのだと思えます。そして、その期待感や使命感が日々のモチベーションになっています。ただ、就職活動を始めた頃は、学部卒での研究開発職は狭き門だという認識でした。大学院修了者が総合職として採用され、研究開発職に就くことが一般的だからです。この会社も、実はインターンシップの選考では落ちてしまったのですが、私の実験への熱意を覚えてくれていて、結果的には地域限定採用枠の研究開発職で採用していただきました。ですから、もし特定の希望職種があれば、総合職以外の選択肢も頭に入れて就職活動を進めてもいいかもしれません。それが予想外のキャリア形成の出発点になる可能性もあるからです。

 


最後になりますが、在学中は「これやってみない?」と声をかけてくれる先輩方のおかげで、遺伝子分野や量子計算など、思いがけず幅広い経験ができました。先輩がサポートしてくれる安心感に包まれながら、予想外の研究にも挑戦でき、楽しむことができました。東京農大は、農業分野を中心に、関連する幅広い分野を学ぶことができます。私が在学中に微生物とは直接的には関係しないタンパク質の研究をしたことも、そんな私がタイヤの研究開発に携わっていることも、予想外を楽しめる起点となったのが東京農大への進学です。受験生のみなさんには、どうか何事も決めつけることなく、大学選びをしてほしいですね。

 

Profile

森川 未来

株式会社クラレ
鹿島事業所
エラストマー研究開発部
2025年3月 生命科学部 分子微生物学科卒業
埼玉県 県立 大宮高等学校出身

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