「おいしさ」を多角的に研究
新たなアイスの可能性を見出したい

「ガリガリ君」はどのようにつくられる? アイスの基礎研究と新商品開発
赤城乳業株式会社に入社して約10年。私はこれまで、アイスの基礎研究と新商品開発に従事してきました。
基礎研究では、製品や使用している原料の機器分析、官能評価を通して、「おいしさ」を多角的に追究します。例えば、かき氷特有の氷の粒の食感を検証するため、顕微鏡で氷結晶の大きさや形状を観察するほか、乳製品やチョコレートといった原料の選定や、仕込みから製品化までの工程、処理条件の違いによって、アイスの口どけや風味にどのような変化が起こるのかを分析して可視化します。こうした基礎研究は、商品の品質を決定づける重要なプロセスです。
一方、新商品開発では、主力であるバー商品を中心に、カップや新しい形態の商品にも挑戦してきました。味づくりは開発チームで議論を重ねながら方向性を定め、品質保証部や技術部とも連携しながら具体化していきます。品質保証部とはアイスの溶けやすさや消費者視点での安全性、パッケージ表現の妥当性などを検討し、技術部とは工場での量産性や製造工程上の課題をすり合わせます。こうした部署横断の対話を経て、商品は形になっていきます。
私はこれまで、「ガリガリ君メロンソーダ」や「ガリガリ君リッチチョコミント」などの開発に携わってきました。メロンソーダ味では、風味の再現にとどまらず、色味や氷の構成によってフロート感を演出しました。さらに、隠し味として果汁や焙炒した糖を配合することで、ひと口でメロンソーダらしさが想起される味わいを設計しています。発売後も市場の反応を踏まえ、味の構成を進化させてきました。
リッチチョコミント味においても、氷との相性を重視し、ミントの爽快感とほどよい苦みのバランス、さらにチョコチップの大きさや風味の出し方まで、細部にわたって調整しました。商品は「つくって終わり」ではなく、消費者の声を受けて磨き続けるものだと考えています。


食品づくりには想像以上の時間と手間がかかることを実感
高校時代、発酵をはじめとする微生物の働きが私たちの食生活を支えていることを知り、強い関心を抱きました。進路を考える中で、微生物の力を体系的に学びたいと考え、東京農業大学応用生物科学部の醸造科学科を選びました。
入学後の学びを通じて、微生物は想像以上に身近な存在であり、とりわけ食品分野に深く関わっていることを実感しました。納豆をはじめとする発酵食品もその一例です。当時、硬式テニス部に所属していたこともあり、栄養バランスや身体づくりへの関心が高く、「食品の性質が自分の身体づくりとも直結している」という感覚を強く持つようになりました。一方で、ラクトバチルス、サッカロマイセス・セレビシエといった多種多様な微生物の名称や特性を覚える授業には苦労した記憶もあります(笑)。それでも、知識が積み重なるにつれて、食品を見る目が大きく変わっていきました。
中でも印象に残っているのが「酒類生産学実験」です。5人1組で約2カ月かけて清酒づくりに取り組み、食品づくりには想像以上の時間と手間がかかることを知りました。工程を分担し、互いに連携しながら進める中で、協調性や役割意識が養われ、完成したお酒を試飲した際には、おいしさを形にして届ける喜びを実感しました。
就職活動では当初、食品を直接届けられる営業職を志望して進めていました。しかし、就職活動を進める中で「おいしさを届ける側」よりも「おいしさを生み出す側」で働きたいという思いが強くなり、食品の開発職へと志望を転換しました。開発職は大学院卒中心というイメージがあったのですが、赤城乳業のWebサイトを見ると、学部卒の社員も多く活躍しており、自分でも食品づくりに挑戦できる環境があるのではないかと感じました。選考が進む中で、「ガリガリ君」に象徴されるユニークなフレーバー展開や挑戦的な商品づくりの姿勢に触れ、そんな遊び心がある社風にも魅力を感じていきました。
営業職から開発職へと方向転換して臨んだ就職活動で、最初に内定をいただいたのが赤城乳業でした。ここでなら、自分の手で新しいおいしさを形にできるかもしれない。そう思えたことが、入社を決めた大きな理由のひとつです。

研究開発部のリーダーとして、アイスの可能性を問い続ける
現在は、研究開発部に所属し、アイスの新たな可能性を探究しています。研究開発部は、中長期的な視点から基礎研究に取り組むことを目的として、2025年10月に新設された部署です。商品開発部から独立したことで、既存の枠にとらわれず、「アイスの可能性」を問い続ける役割を期待されていると感じています。発足間もない部署だからこそ、リーダーとして、メンバー一人ひとりの強みを活かしながら挑戦を進めていくことも重要な役割です。

意見を出しあい、挑戦的な姿勢をもって取り組む、それが研究開発部の特徴です。
仕事の中で難しさを感じているのは、明確なゴールが存在しない中で研究を進めなければならない点です。おいしさは人によって感じ方が異なり、唯一の正解があるものではありません。そのため、科学的なデータや理論に基づくアプローチに加え、人の感覚や価値観を捉えるマーケティング的な視点も欠かせないと考えています。研究者として専門性を磨きながらも、多角的な視野を持っていきたいと思っています。

社会人として約10年間、アイスと向き合ってきた経験を土台に、市場のアイスにとらわれず、世の中を驚かせる商品を生み出していきたい。食の楽しさや感動を届けるため、これからも探究心を持って成長し続けていきます。
Profile
髙橋 翔平
赤城乳業株式会社
開発マーケティング本部
研究開発部
2016年3月 応用生物科学部 醸造科学科 卒業
埼玉県 私立 東京農業大学第三高等学校出身