2022.03

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学長メッセージ「新たな130年に向けて東京農業大学はチャレンジします」

 

江口 文陽

東京農業大学 学長

 東京農業大学は、1891年に徳川育英会を母体として設立された日本で最初の私立農学校です。建学の祖 榎本武揚翁は、農学教育とは、理論と実践が備わって真の本物となり、産学との実りある連携が国や人への幸福を導くことを提唱されました。

 

 初代学長横井時敬先生の名言「稲のことは稲に聞け、農業のことは農民に聞け」は、榎本武揚学祖の提唱を実践し、行動によって発せられた「農学の源」です。

 

 創立130周年という歴史を重ねながら、建学の精神「実学主義」により、社会に貢献できる総合農学の高度な専門性を持った研究者・技術者を多く輩出してきました。

 

 東京農業大学の教学と研究の基礎は、北から南まで日本各地に設置されたキャンパスとフィールドであり、それは他大学にはない“誇るべき宝”です。特に農場などのフィールド施設を核として、学生と教職員が“フィールドを知り、フィールドに学び、フィールドと暮らす”ことで多くの新発見を手に入れてきました。東京農業大学においてこれから育つ学生は、令和時代に世界を牽引する人材となると確信しています。 

 

 東京農業大学の持つフィールドを活かし、“人物を世界に輩出する”というビジョンこそが確固たる「農大ブランド」を構築し、強靭な組織力を持った大学になると確信しています。

 

 現在東京農業大学は、学生約13,000人、教職員約700人を擁し、特色ある総合農学の教育・研究を展開しています。「総合農学」とは、山の頂上から海洋までのフィールドに展開される農林水産業とその関連分野、環境や生活と深く関わる領域であり、自然科学、社会科学のみならずそれら以外の幅広い分野をカバーする総合的な学問です。すなわち、私たちの日常生活と最も密接した学問であり、世界が目指す持続可能な開発目標SDGsに貢献しています。将に「人間が生きるため」、「生活環境をより豊かにするため」、「食料問題や飢餓をなくすため」、「平和な世界を創出するため」など全ての人々が何よりも先に考えなくてはならない実学分野です。「豊かな生活」「命を守る」「地球環境を守る」ための最先端科学である「総合農学」をさらに推進することが東京農業大学に求められています。

 

 これからの社会に目を向けると、少子高齢化、地方の過疎化などの課題解決は急務です。そうした課題解決のためにIoT、AI、ロボットなどの先端技術を取り入れたスマート農学の実現とともに、東京農業大学らしい「温故知新の技術活用」への取り組みも大きな社会実装となるはずです。

 

 東京農業大学では、130周年のこの時に教育・研究の理念である「実学主義」をさらに進展させるために「自ら学び」「自ら考え」「自ら開拓する」姿勢と、「社会に貢献する心豊かな人間力を有する人材の育成」「グローバルで学際的視野を持った研究者や技術者の育成」「次世代を担う熱意あるあらゆる分野でのリーダーの育成」を目指します。

 

 社会実装に資する「イノベーション技術」の創造は決して容易ではありません。しかしながら東京農業大学130年の歴史により構築された先達からの限りない支援とともに次の130年に向けて新たな歴史を創るべく学生、教職員共に総合農学による世界の発展と豊かな環境創造のみを見つめて一致団結して邁進してまいります。

 

 これからも東京農業大学は、皆様の期待に応えるべく努力を続けてまいります。これまでと同様に今後とも引き続きご支援とご指導いただきますよう心からお願い申し上げます。